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音楽を語るだけではあきたらず、こんなコーナーを作ってしまいました。
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野獣死すべし 鎖斗拳 02/5/8(水) 18:26
 ┗ 野獣死すべし その2 山賊 02/5/15(水) 16:04
  ┗ 野獣死すべし その3 鎖斗拳 02/5/15(水) 16:39
  ┗ 野獣死すべし その4 バウ 02/5/17(金) 15:46

野獣死すべし
 鎖斗拳  - 02/5/8(水) 18:26 -

引用なし
   1980年 東映
監督/村川透
脚本/丸山昇一
原作/大藪春彦
撮影/仙元誠三
音楽/たかしまあきひこ
出演/松田優作、小林麻美、室田日出男 鹿賀丈史、根岸季衣
制作/角川春樹事務所


作:萩原朔太郎「漂泊者の歌」

日は断崖の上に登り
憂ひは陸橋の下を低く歩めり。
無限に遠き空の彼方
続ける鉄路の柵の背後(うしろ)に
一つの寂しき影は漂ふ。

ああ汝 漂泊者
過去より来りて未来を過ぎ
久遠の郷愁を追ひ行くもの。
いかなれば蹌爾(そうじ)として
時計の如くに憂ひ歩むぞ。
石もて蛇を殺すごとく
一つの輪廻(りんね)を断絶して
意志なき寂寥(せきりょう)を踏み切れかし。

ああ 悪魔よりも孤独にして
汝は氷霜(ひょうそう)の冬に耐えたるかな
かつて何物をも信ずることなく
汝の信ずるところに憤怒を知れり。
かつて欲情の否定を知らず
汝の欲情するものを弾劾(だんがい)せり。
いかなればまた愁ひ疲れて
やさしく抱かれ接吻(きす)する者の家に帰らん。
かつて何物をも汝は愛せず
何物をもまたかつて汝を愛せざるべし。

ああ汝 寂寥の人
悲しき落日の坂を登りて
意志なき断崖を漂泊(さまよ)ひ行けど
いづこに家郷(かきょう)はあらざるべし。
汝の家郷は有らざるべし


松田優作が劇中で何度か口ずさむこの詩は、作品のテーマを象徴する重要なモチーフだが、大藪春彦の原作にはいっさい登場しない。このような点からも推察されうるようにこの作品は大まかな設定だけを借りた全くオリジナルな作品であり、村川透と松田優作の代表作というだけでなく日本映画史上他に類を見ないピカレスクロマン(懐かしー)の傑作である。

今年は優作の13回忌ということで、在りし日の勇姿をしのぶイベントが多いが、こういう機会に現代の若い子たちにも優作ワールドに触れてほしいと思う。これは俺みたいなおやじが回顧主義で言ってるんじゃなくて、かっこいいものは時代に関係なくかっこいいってことをわかってほしいからだ。

で、野獣死すべしだけど、もうこれはやばすぎでしょ。ヒロイン(小林麻美)を表情ひとつ変えずに射殺したり、前編通してなにかに憑かれているような優作も凄いけど、競演陣もまたさらにやばくて、特に刑事役の室田日出男と優作が列車でリップ・ヴァン・ウィンクルの話をするシークエンスはもう背筋が凍りつくほどの緊張感。今やすっかり料理の鉄人おじさんになっちゃった鹿賀丈史もこの当時は超きれまくりで、最後はあえなく優作に射殺されちゃうんだけど、インパクトあったなあ。
一応、伊達邦彦(優作)が精神に異常をきたした(というよりは解放されすぎちゃったのか)理由めいたものの説明もあることはあるんだけど、そのへんマジに受け取ると無理ありすぎで、当時も新聞の映画評でたたかれたりしてたっけ。

今にして思えば、この当時は映画がまだ重要なカルチャーとして機能していたんだよね。特に角川の一連の作品は見事に当時の世相や雰囲気を切り取っているし、今改めて観ても作品としての完成度も高いしね。

優作といえば探偵物語(もちろんTV版)と太陽にほえろのジーパンの印象が一般には強いようだけど、かれの本領が発揮されるのは、じつはこの作品以降である。
家族ゲームしかり陽炎座しかり、もちろん遊戯シリーズもふくめ、出演作すべて必見なのは言うまでもない。

野獣死すべし その2
 山賊  - 02/5/15(水) 16:04 -

引用なし
   相変わらず力のこもったレビューっすね。

今の優作ブームがキムタクが火付け役だって言うだけで情けない気がするけど。
まぁイイものが再評価されるのはイイ事だからね。
ところで私的には優作ときたら、原田良雄(漢字あってる?)がそれより一世代前の癖のあるワイルドなイメージでつながるんだけど。
歌うたってたスタンスとかも似ててね。
この前TVで映画「アナザヘブン」やってて出演してたけど相変わらずでかっこよかったですよ。
彼は代表作はあんの?なんか作品があたってないような…。

野獣死すべし その3
 鎖斗拳  - 02/5/15(水) 16:39 -

引用なし
   >ところで私的には優作ときたら、原田良雄(漢字あってる?)がそれより一世代前の癖のあるワイルドなイメージでつながるんだけど。

原田芳雄っすよー!
この二人は黒木和雄の竜馬暗殺(ATG)で初共演してるけど、優作は影響受けまくってるね。まあ、当初はマネっこだったんだけど、その後しっかり自分の演技を確立したのはさすが天才といえましょう。

>彼は代表作はあんの?なんか作品があたってないような…。

そ、そ、そんなことないっす。特に70年代ATG作品は原田芳雄抜きには語れないっす。

ちなみに主な出演作品
1973 赤い鳥逃げた? グループ法亡=東宝 藤田敏八
1974 田園に死す 人力飛行機舎=ATG 寺山修司
1975 祭りの準備 綜映社・大映映画=松竹 黒木和雄
1978 オレンジロード急行 松竹 大森一樹
1980 ツィゴイネルワイゼン シネマプラセット 鈴木清順
ヒポクラテスたち ATG=シネマハウト 大森一樹
ミスター・ミセス・ミスロンリー 市山パーソナル=ATG 神代辰巳
1981 スローなブギにしてくれ 角川春樹事務所=東映 藤田敏八
陽炎座 シネマプラセット 鈴木清順
1982 水のないプール 若松プロ 若松孝二
TATOO<刺青あり> 国際放映=高橋プロ=ATG 高橋伴明
さらば箱舟 人力飛行機舎=ATG=劇団ひまわり 寺山修司
友よ 静かにねむれ 角川春樹事務所=東映セントラルフィルム 崔 洋一
コミック雑誌なんかいらない N・C・P 滝田洋二郎
1986 キャバレー 角川春樹事務所=東宝 角川春樹
1987 さらば愛しき女よ ライトビジョン=松竹富士 原田真人
ちょうちん 廣済堂エンタープライズ=ヴァンフィル 梶間俊一
1988 明日 TOMORROW ライトビジョン=沢井プロ=創映新社 黒木和雄
1989 キスより簡単 若松プロ=バンダイ 他 若松孝二
どついたるねん 荒戸源次郎事務所 阪本順治
1990 浪人街 ライトビジョン=松竹 黒木和雄
われに撃つ用意あり 若松プロ=松竹 若松孝二
1991 夢二 荒戸源次郎事務所 鈴木清順
無能の人 セディック=ケイエスエス=松竹 他 竹中直人
1992 いつかギラギラする日 松竹 深作欣二
寝盗られ宗介 若松プロ 若松孝二

野獣死すべし その4
 バウ  - 02/5/17(金) 15:46 -

引用なし
   さすが、鎖斗拳さんリキはいってますねー

>>彼は代表作はあんの?なんか作品があたってないような…。
>
>そ、そ、そんなことないっす。特に70年代ATG作品は原田芳雄抜きには語れないっす。
>
そのとおりっ!
でも山賊さんの言わんとするところもわかるんですよ。
原田芳雄って主役張ってドーンってイメージないんですよね(名バイプレーヤーていうイメージもないけど)私も原田芳雄の主演代表作は何?ってきかれたら、考えてしまいますね。どうしても主役じゃなくて準主役か準々主役くらいの位置で存在感だしまくってた記憶ばかりが浮かんできてしまって・・・
松田優作って観客に「優作が出てるから観にいきてぇ」と思わせる役者でした、ある意味「アイドル」。対して原田芳雄は映画を観終った後で「やっぱしぶいなー」「原田芳雄抜きにはこの映画語れんなー」と思わせる役者だったんではないかと。
さらに言うと優作は後者の資質も兼ね備えてましたね。
そこがやはり単なる「アイドル」ではない優作の凄さでしたね。

そういえば優作が亡くなったとき某映画の現場で製作進行のバイトしてたんですが。優作死亡の報が流れた朝「きっと撮影所は大騒ぎに違いない」と思って現場に行くと、全然そんなことはなくて私が一人で騒いでいると制作のチーフに「へー優作好きだったんだ?」とか意外そうに言われたり、「害虫が一匹死んだだけだ」とか結構偉いスタッフが言ってたりして(普段は「現場命」の厳しいけど凄くいい人って感じの人がだよ)かなりショックを受けたことがありましたねー。そのことを仲の良かったスタッフに話すと「○○さん優作にいじめられたんじゃないの」といってましたが。

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